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退院調整看護師とは?その役割と実態について調査しました

病院の病棟において「師長未満、主任以上」の看護師が困っていることといえば、「入院期間を短縮せよ」というプレッシャーではないでしょうか。医療費の削減に取り組む厚生労働省は、これまで以上に入院期間の短縮を推し進めるために、退院調整を要求しています。また、家族の受け入れ状況が悪いケースでは、在宅療養が非常に困難となる場合も多いようです。そんな中、患者がよりよい状態で早期退院できるよう支援を行なう退院調整退院調整看護師に求められる役割やその実態について調査しました。

2017年12月11日

退院調整看護師とは

入院期間が短縮する中で、在宅でも安心して療養生活が継続できるように患者を支援するのが退院調整看護師の役割です。

ある市立病院には8つの病棟があり、各病棟には1名ずつ退院調整看護師がいます。8名全員が主任クラスで、中には「そろそろ師長かも」と噂されている優秀な看護師も含まれています。
病棟看護師の主任といえば、プレイイングマネージャーです。自ら「選手」として病棟看護の仕事に奔走しながら、ときに「監督」として若手看護師の育成に取り組みます。

その市立病院はこうした貴重な人材である主任看護師たちに対し、リーダー業務を免除する代わりに、入院患者を1日でも早く退院させる「退院調整」に専念させたのです。

退院調整コストのために看護師が疲弊している?

「入院期間の短縮」「在院日数の減少」「退院調整」

病院では「入院患者を追い出す」というニュアンスを醸し出さないように、こうした言葉を使いますが、どれも同じ意味です。
つまり、医療費を削減するために入院期間を制限する取り組みです。

入院期間を短縮させる動きはコスト面が大きい

厚生労働省が、「医療費の伸びが過大にならないよう」「平均在院日数の短縮を図り」「医療費の適正化対策を推進する」と明言しているくらいです。

厚生労働省のホームページにも、入院期間を減らすことの重要性が明記されている。
資料「Ⅲ 医療費適正化の総合的な推進」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/taikou04.html

ここで注目したいのは、「医療費の伸びが過大にならないよう」という言葉です。
つまり、入院期間を短縮させる動きは、良い医療を行おうという動機からではなく、コストの問題なのです。
こうした国の指導は病院に浸透し、病院の平均在院日数は、1990年の47.4日から2012年には33.2日にまで減っています。

22年の間に14日以上も減ったのです。
(資料「3 退院患者の平均在院日数等」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/03.pdf)

入院期間が減ることで看護師の労働量が増えてしまっている

もちろん、医療技術の進展と看護スキルの向上から、入院期間が短くなった側面もあるでしょう。それは患者にとって喜ばしい成果といえます。
その一方でベテラン看護師たちは、入院期間が減ったことについてこう言っています。

  • 「医師や看護師が気ぜわしくなった」
    「看護師は疲労困憊している」
    「ほぼ倍働いている気持ち」

看護師の努力なくして、患者の退院期日は早まりません。ですので「看護師の努力」イコール「看護師のストレス」という構図が出来上がってしまうのです。

「退院支援」は病院のエゴ?

「看護師が退院支援をしている」と聞いて、ネガティブな気持ちになる患者はいないでしょう。入院患者はすべて、退院して自宅に帰ることを望んでいるからです。

ではなぜ退院支援を担当している病院病棟の看護師たちは疲弊するのでしょうか。それは業務内容が過酷だからです。

退院支援の業務は、次の通りです。

1:在院日数が長くなり病院での医療提供も終わっている患者の選択
2:どういった方向で退院を促すかの検討。自宅復帰か、施設への入居か、訪問診療や訪問看護の利用か、など。
3:退院後の患者に対し、病院としてどのようにアフターフォローをするかの検討

国内のほとんどの急性期病院では、入院の初日に患者本人やその家族と他院日の相談をします。

看護師が患者たちに、クリニカルパスという「標準的な入院日程」を示し、「この順番に治療が進むので、退院日はこの日になります」と伝えるのです。

患者や家族によっては、クリニカルパスは「治療終了予告」に感じることでしょう。

そして看護師ですら、「要するに早く退院してもらわないと困ります、と伝えている」という意識があるのです。

新規患者が増えると業務量も倍増してしまう

看護師の苦難はまだあります。

患者の在院日数が減ることで新規の患者が増える

患者の在院日数が減るということは、それだけ新規の患者が増えるということを意味しています。
病院の病棟看護師たちは、担当する患者の情報を徹底的に集め、頭の中に叩き込みます。そして、自分の担当ではない患者の情報もたくさん集めようとします。

そうしなければ病棟看護師は務まらない事情もありますが、もうひとつ「看護師としての矜持(きょうじ)」もあります。

看護師たちは、医師から患者の状況を聞かれたときに「担当ではないので詳しくは知りません」とは言いたくないのです。
それで看護師たちは新しい患者が入院してきたら、電子カルテを読み込んだり、診療情報提供書に目を通したり、または患者や家族と話しをしたりして、情報収集をするのです。

入院患者の入れ替わりが激しい病院は売上が上がるので、病院経営者は喜ぶでしょう。しかしその売り上げ増は、看護師の仕事を増やして達成しているともいえるのです。

1:看護師たちが「最近疲れる」と言う回数
2:在院日数の減少
3:病院の売上が増

の3つには相関関係があります。

退院調整に伴うさまざまな課題

また、これまでお話した内容以外にもさまざまな課題があります。

地域資源との連携という課題

入院患者を1日でも早く退院させるには、地域資源の活用が欠かせません。

しかし、病院の病棟看護師を長くやっている人ほど、地域資源との連携は苦手でしょう。病棟看護師は病棟という閉じられた職場の中にいるからです。

一口に「地域資源を活用する」と言っても、訪問診療医や訪問看護師との信頼関係づくりから始まり、介護施設の施設長やケアマネージャーとの人脈形成、障害者施設との連携など「やること」はたくさんあります。

病院には地域連携室という部門があり、ここには社会福祉士やベテラン看護師がいます。地域連携室に配属されれば、病院の外に出て信頼関係や人脈をつくることもできるでしょう。

しかし病棟に居て、一般看護師と同じ程度に夜勤をこなしている「退院調整」担当の看護師には、病院外の地域とつながることはとても困難です。

退院させたい患者ほど退院させにくいというジレンマ

退院調整が必要な患者ほど、退院させることが難しいとうジレンマがあります。

急性期病院の病棟ですら「高齢+認知症」の患者が急増しています。急性期病院の病棟看護師は、高度な看護技術を駆使して急性疾患の治療にあたっているのに、それとは別に高齢者へのケア、認知症患者へのケアが必要になるのです。

高齢者へのケアも認知症患者へのケアも、いずれも介護とほとんど変わりありません。そして「急性疾患+高齢+認知症」の組み合わせほど、退院調整が難しい患者はいません。家族ですら引き取ることをためらうことが少なくないからです。

看護師が行っている退院調整は、ほぼすべてが困難事例といってもいいのです。

まとめ - 看護師の負担を減らす手段とは

入院はおカネがかかる。

これは厚生労働省も医療機関も医師も一般市民も、そして看護師も了承していることでしょう。
そして医療費が国の財政を圧迫していることも明白です。

ということは、誰かが「在院日数の減少」に手を付けなければならいのです。
しかしその仕事がいま、看護師に押し付けられすぎているという懸念があります。

患者の退院を促す仕事は、なにも看護師だけが背負う必要はないのです。医師、コメディカル、病院事務員でも、患者に「早く退院してください」と伝えることはできます。
大変な仕事や嫌な業務を、それぞれの職場が少しずつ持ち合うことで、看護師の負担を減らすことも必要なのではないでしょうか。

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